ギャンブル依存症は、本人の人生だけでなく、家族との信頼関係や日常生活までも壊してしまう病です。この記事では、僕自身の経験をもとに、「家庭が壊れるまでに起こったこと」や「どこで信頼が崩れたのか」、そして回復の糸口についてもお伝えします。
専門的な知見も交えながら、家族や当事者が少しでも理解を深められるよう願って綴ります。
ギャンブル依存症がもたらす家庭への影響
- 金銭的な嘘の始まり:最初は少額の嘘が、やがて深刻な信頼喪失に。
- 感情の麻痺と家庭への無関心:大切な人との時間よりギャンブルを優先してしまう。
- 暴言・DVなどへの発展:ストレスを家族に向けてしまうケースも。
金銭的な嘘の始まり
ギャンブル依存症の多くは、「少しだけ」「取り返せるはず」という思いから始まります。
やがてお金が足りなくなり、家族に嘘をついてまでお金を工面するようになります。
これが信頼崩壊の最初の一歩です。

僕自身も最初は「お小遣いを取り返したい」という気持ちでパチンコにのめり込み、気付けば借金してまで取り戻そうとしていました。
感情の麻痺と、家庭への無関心
依存症になると、感情の起伏が乏しくなり、家庭での会話も減っていきます。

僕自身は幼い娘を寝かせつけているときも「オンカジで稼がないと」と頭の中で思っていましたね。
この無関心が、家族に深い孤独を与えます。
暴言や暴力、DVへと進行するケースも
ギャンブルで感情をコントロールできなくなった結果、怒りを家庭に向けてしまう人も少なくありません。暴言、モノに当たる、暴力――これらは家庭内に深い傷を残します。

「借金を返済しなきゃ」といつも焦りを感じていて、妻の一言に異常なほど怒りを感じ、モノに当たってしまいました。
医学的な視点──なぜ信頼を壊してしまうのか?
依存症は「意思の弱さ」ではありません。脳の報酬系(ドーパミン)が異常に反応し、快感を繰り返し求めてしまう「脳の病気」なんです。
判断力の低下、自己中心的な行動、ウソをつくことへの罪悪感の鈍化も、脳の変化によって説明されます。(参考文献:厚生労働省「依存症対策について」)
ギャンブル依存症の詳しい解説はこちらの記事を参考にしてください。
経験者として語る「信頼が壊れる過程」
僕は、結婚当初から自分のギャンブル癖を妻に隠していました。
パチンコへ行くために残業や休日出勤とウソをつくようになり、次第にウソをつくことに罪悪感は無くなっていきました。
そして、隠れて借金もするようになりました。
表向きは「良き夫」でしたが、裏ではギャンブルに狂っていたのです。子どもが生まれてからもギャンブルは止まらず、借金を重ねていきました。お互いに育児で疲弊する中、妻に寄り添うどころか、借金のストレスを妻にぶつけてしまうこともありました。
やがて妻に借金がバレましたが、それでも僕は「株で失敗した」とウソを重ねました。
結局、離婚することになりましたが、そのときに妻から言われた言葉は今でも覚えています。
「今まで全く気が付かなかった。こんなに大きな借金を隠していて、どうして何事もなく笑っていられたのか。もう何も信用できない。」
何年間もウソをつかれ続けた妻にとっては、僕のことを信じられなくなるのは当然でした。
家族ができること、当事者ができること
次に、当事者支援を行っている中で感じた当事者、家族それぞれの対応について解説します。
家族ができること
- 責めるよりも「話を聴く」姿勢を持つ
- 感情的な対応ではなく、専門機関へ相談する
- 限界を感じたら「距離を取る」ことも選択肢
当事者ができること
- 正直になる(ウソをやめる)
- 自助グループ(GAなど)に繋がる
- 「回復したい」という意志を持ち続ける
もし「自分や家族も当てはまるかも…」と思ったら
▶︎ ギャンブル依存症によって信頼を損なっている兆候チェックリスト
以下のリストに複数当てはまる方は、早めに相談機関や自助グループへつながることをおすすめします。
- ギャンブルの金額や頻度について家族に嘘をついている
- お金の使途を隠すようになった(または説明できない支出がある)
- 家族との会話や食事を避けるようになった
- 子どもの行事や大切な予定をギャンブルで欠席した
- 家族からの信用を失っていると感じる
- ギャンブルを否定されると怒りが湧く
- 自分の行動を正当化する言い訳が増えている
- 配偶者や子どもとの関係が冷え込んでいる
- ギャンブルに関して「やめたいのにやめられない」と感じる
- 家族に対して暴言や態度の変化が出ている
相談先・支援先の例
- 自助グループ:GA(ギャンブル依存症当事者向け)、ギャマノン・GAFA(家族向け)
- 公的機関:市区町村の依存症相談
- 心療内科:依存症専門の医師
- 支援団体:ギャンブル依存症問題を考える会、全国ギャンブル依存症家族の会
回復は、信頼の再構築から
僕は今、自助グループに通ってギャンブル依存症から回復することで、少しずつ元妻や娘との関係を修復しています。完全に元に戻ることはなくても、「正直に生きる」ことが信頼の再構築に繋がっていると感じます。
ギャンブル依存症によって壊れた家庭も、「回復」というプロセスを通じて、少しずつ関係を築き治すことは可能です。
まずは相談することからはじめてみましょう。
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